河原谷鉱山夢前ハイウェイ
(こうらだにこうざんゆめさきはいうぇい)
場所・姫路市夢前町山之内甲

昔、ホームページを始めたばかりの頃、
播州野歩記さんのこの記事に、心を時めかせ、この場所へやってきました。

その頃は、
「姫路に鉱山があるなんて!!」
と大はしゃぎでした。

もちろん、痛い目に合いましたとも。

まず最初は、天候不順。
姫路市街はピーカンなのに、ミゾレがどかどか降る鬼畜仕様。
谷あいの宿命なんでしょうが、素で凍えました。

携帯の電波のカケラも入らない場所で、マトモに遭難しそうだったので、
あえなく退散。

次は友達と連れ立って、チャレンジ。
携帯の電波は入らなくても、二人いれば最悪一人が助けを呼べますからね。
まあ、道連れになる可能性もないとは言えませんが。
しかし、山の落石を踏み車が大破・・・・。

友達にいらない出費をさせるハメに・・・・。

まあ、普通は罪悪感もろもろで、諦めるもんですが、
性懲りもなく、最チャレンジ。

別の友達を伴って(さすがに言い出しにくいので)!今度こそ!!

折からの台風で倒木がひどく断念・・・・。

もちろん倒れた杉の木に抱きつきながら、他の幹に飛び移るマリオ的アクションに、
友達の嫌気がさしたのも言わずもがな。

4度目は、初心に返って単独突入。
朝一から行って時間があまりそうだったので、川の逆側にある素敵スポット
亀ヶ壺を見物に行く余裕.っぷり。

まあ、時間を見誤って夜の暗闇の中、倒木をかき分ける
悪夢のような帰り道になりましたが。

ここまでくれば、まあもう手を出さないのが大人のような気がしますが、
穴居人はあきらめません。

5度目の正直ってカンジで、やってきました。

必要以上に着込んで、草刈り鎌を持ち、懐中電灯に電池満載、
早朝出発で時間もたっぷり。移動も自分の車で。



因縁の地がすぐそこに!

雪彦山へ向かう道の途上、
この威圧感のある岩山が見えてきたら、

河原川(こうらがわ)

今回の目的地へつながる道が出てきます。
と言っても、
もちろん鉱山へまっすぐ
案内してくれる訳じゃないですが。

実は夢前町随一の景勝地、
亀ヶ壺と途中まで道が一緒なんです。

最寄りの神姫バスのバス停、
河原口にも、デカデカと
名勝 亀ヶ坪の滝と宣伝してくれてます。
このバス停で降りる多分、
8割ぐらいはここに行く為なので、
運転手さんに尋ねるときは楽かも。

残り2割は鉱山?
いえいえ、鮎取り(シーズン限定)です。

他は鉱山どころか住人すら怪しいトコです。
何せ周辺の民家も数えるほどしかないので・・・
中途半端に整備された、
半分オフロード状態の道を延々行くと、

眼前に別荘地が。

地図上でみると、行程の7分の1ぐらいですが、
疲労感がパナイです。

それにしても、この夢具合。

地名だから救いがあるものの、
本気で言ってたら、悲惨極まりない現状ですよ。

何が、とはまでは申しませんが。
さあ、どんどん行きましょう。

この開けた河原ぐらいまでは、
なんとか車でこれます。

ま、オフロードじゃないと、
落ちてる石の多さの前では無力です(実体験)。

坂道で、
「バンパーこするんじゃね?」
とか心配してる姫路ナンバー常連の方々は、
素直に歩いてくることをオススメします。

ここまでゆうに30分は歩くけどね。

ってもう目ざとい方は気付かれたかもしれません。
ものすごく整備されているということに。

観光道にしては立派すぎると、
誰も疑問を持たないのは、
六甲山とかに行き過ぎなんでしょうか?

夢前町の名も無き山奥ですよ。
国内レベルで有名な雪彦山でさえ、
あの程度の山道整備(褒め言葉)ですよ。

ここまでやる理由は?
亀ヶ壺?

あの程度の滝、ごまんと(自主規制)

そう、鉱山です。
過去の栄光がここに残ってるんです。

まあ、その栄光も資料0なんですがね。

さて分岐点が近づいてきました。

亀ヶ壺レビューの人たちが、
口をそろえて不気味だとのたまう、
廃屋が目印です。

ここにも立派なコンクリの橋。

この姿を覚えておいてください。
後になれの果てが出てきますんで。
一応、
もはや、廃屋と一体化しつつある
案内板も親切に設置されてます。

まあ、亀ヶ壺にいきたい人は、
案内板を頼りにしなくても、
ただただまっすぐ歩いてたら
たどり着きますけどね。


しかし、この案内板の芦谷ノ滝、
一体、どこなんでしょう?

この先、滝が一杯ありすぎてわからん・・・。
さあ、実は
ここからが夢前ハイウェイ
(命名:播州野歩記さん)
の始まりです。

コッチの方が立派な橋がかかっているので、
間違えて渡る人もいそうですが。

このページで見たような光景に出くわしたら、
引き返してください。

その先に名勝はありません。

こっちは間違ってもハイカーと
100%すれ違うことはありません。

下手すりゃ遭難します(現実味)。

だって、コンクリ橋を渡ってすぐで
この有り様ですからね。


さあて、今回も
倒木と仲良く乳繰り合います
か。

藪こきとは、また違う過酷さですよ。

中身が腐ってるのか(乗っても大丈夫か?)
すら運任せのスリルはなかなか、
ピクニックに最適な登山コースじゃ味わえません。
(味わいたくもないけど)
と砂防ダムを越えて、
しばらく歩くとお目当てのものが見えてきます。

何だこれは!?
とフツーにうなれる巨大な建造物。
否、遺跡!?

この山の寂れ具合と対極をなす規模、
これを見てときめかない人とは友達になれない程です。

まあ、なんせ5回も来てますからね、
ホント。

正面から見ると、
その威容も一塩。

しっかりとした施設だったことがわかります。

しかも作られたのが明治、ともなれば
産業遺産的な価値も見いだせそうです。
ってか、そもそもコレは何?

という疑問もごもっとも。
←上からみると、その名残が・・・
見るからに橋脚ですね(苦しい)。
野積みの橋脚とはまた珍しい。

どんな橋桁がかかっていたかは、
想像に頼るしかありませんが・・・
一箇所、なんとか残っているので、
←こんなカンジだったんじゃないでしょうか?

100年前のコンクリでは、
風雨に耐え切れなくとも、しゃあないです。

これが成れの果てというヤツですね。
最初の方のコンクリ橋と明らかに、
質が違うので、当時物考えて間違いないはず。

相坂トンネルでもやりましたが、
当時、レンガよりもよっぽど高級品だった
コンクリをこんなに奮発するなんて、
恐ろしい気合の入りよう

操業してた記録がないので、試掘の段階で
ここまでやるには相当の自信があったはず。

それなのに記録がない
これはホントに謎。

え?行き止まり!?

滝に遮られて、道がない?

いえいえ、崩落してるだけですよ。
右手に軽いロッククライミングで行ける道があります。

まあ、それを道とは言わんかも知れませんが。
その後も、点在する遺跡群。

しかし、さっきから資料がないない言ってる割に、
明治やら100年やら具体的な話が出てるのが
気になった方もおりましょう。

実は、鉱山を操業してた記録はありませんが、
鉱山を試掘してた記録ならあるんです。

明治31年に発行された、
特許採掘一覧という本に、
馬川吉助という人が、農商務省鉱山局から
試掘の許可を得たと記されているんです。
明治29年の記録にはなく、
明治44年の記録にも名前がないところをみると、
どうもこの10年以内の間に、
ここで悲喜交交のドラマがあったんでしょうが、
今やそれを知る術がありません。

ただ、手押し車で鉱石を運ぶガッツは、
年月が経っても、彼らのマジ度を伺わせてくれます。

←こんなデカイ手押し車見たことないですからね。

(タイヤが新しそうに見えるので
当時物とは限りませんが)
それはそうと、
道がずいぶん行きやすくなってます。
林業のオッサン、どうもありがとう。

昔、友達と来たときも
こんなぐらいだったら引き返さなくて済んだのに・・・

とにかく、杉の木ポールダンス
踊らなくてよさそうです。

このペースなら鉱山まで、すぐ行ける!?
と言いながら、
3時間はかかっちゃいましたが。

やはりハイキングコースと比べると、
難易度が高い・・・・。

まあ、ほとんど河原を歩くので、
退屈はしないんですがね。

ほぼ亀ヶ壺とおなじ位の距離を歩いたら、
目的地。

この平らな岩肌が続く川景色は
亀ヶ壺方面もまったく同じながら、
(この辺りの特色?)
ちょっと面白いかも。

さあ、やっと!
五度目の挑戦でやっと!

たどり着きましたよ!!

播州野歩記さん、
情報協力してくれたやまあそさん、
ありがとうございますっ!!

図書館で資料を漁る虚しい日々
友達に謝り倒し、愛想をふりまく日々
それをくぐり抜け、やっと出会えました!

特殊採掘一覧にしか載っていない、
幻の鉱山、
河原谷鉱山(こうらだにこうざん)です。

う〜ん!感無量!!

どうです!
この穴蔵感!!

しかし素掘りの鉱山でも大振り。
やっぱり操業主はかなり本気だったんでしょう。
だって試掘にしては、
穴の規模がありすぎるんですもの。
人が余裕で立って歩けるものを、
明治で掘ろうと思えば相当の労力ですよ。

あのチンケな相坂トンネルでも、
3、5億円かかってますからね。

山奥だと人件費も馬鹿にならんというのに・・・
しかも、事業に足る鉱石が
出なかったというおまけ付き。

試掘の記録があっても、
操業した記録がないのは、
ここで採算がとれる程の鉱石が出なかった証拠。

山師(やまし)は博打の代名詞ですが、
何かこう、これだけ立派な施設群を見せつけられると、
わたしのしごと館に匹敵する、
物悲しさをカンジます。

ま、あっちは
誰も責任取らないお役所仕事
ですが。

馬川さんの安否を是非、確認したいトコです。
(もちろん資料ゼロ)
播州野歩記さんが、
「おそらく周辺には多数の坑道があるのだろう」
と記されていたとおり、
周りにはチラホラ間歩が顔を出してます。

ふと見上げると、穴が空いてる・・・

ここはパラダイスか!?
残念ながら、土が入り込んで
埋まりかけですが、心配ご無用。

ふと上を見れば、まだまだ・・・
すぐに別の穴が。

生野の鉱山も数千の試掘跡があるというんで、
この位は序の口なのか?

まあ、あっちは秀吉
2万の軍勢でシャカリキに陥としに行ったほど、
盛況だったのに、コッチは
夢前町史でさえ、登場しない

まさに幻の鉱山ですからね。
しかも縦坑

試掘跡には他にも行きましたが、
縦は初めてかも。

操業し始めてからなら、
鉱脈は縦にはしる傾向があるので、
縦坑はポピュラーなんですが、
ここまで深いのを最初から・・・・

情熱の空回りっぷりがまた痛々しい。
素敵。
雨が降ってたら、
もしかしたら面白くなるのかも知れない、
落差だけなら亀ヶ壺よりも高いに違いない、
平べったい滝の周辺は常時、こんなカンジ。

いやぁ、いい。
5回目、苦節7年に及ぶ取材でしたが、
記事にできて、ホントに良かった。

7年眠ってる夢前川の記事も、
この調子で出せればいいんですが。
と、帰り道。
ふと山肌を見上げると・・・

あれ、怪しい・・・
転倒に次ぐ転倒で、
体中どろんこになりながら、上がってみると、
やっぱ、ありました。

この調子だと、もっと開いてるのかも。
6回目のチャレンジをするべきか・・・。

やっぱ、ここの魅力は果てしないですよ、ホント。
最後は、多分、
芦谷ノ滝じゃないの?
と思われる分岐点近くの滝を御覧ください。

ここだったら、あの案内板にしたがって
山道を行った人はいい面の皮ですよ。

だって、案内板のとおり行くより、
下って川を上ったら
2分でたどり着くんですから。

まあ、夢前ハイウェイに辿り着いたら、
それはそれで愉しめるかも知れませんので、
結果オーライですかね(多分、違う)

穴場スコア「個人的にはアルバトロス、ホントはトリプルボギー」クラス

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撮影:2013.12 by 穴居人