相坂隧道
(あいさかずいどう)
場所・姫路市香寺町相坂

何が怖いというのでしょう?

あ、こんな山奥にこんな立派なトンネルを作った人の心ですか?
それなら大賛成です。

だってね。よく考えてください。
東京駅でさえ、280万円で作れた大正時代にあって、
2万円もかけて作った価値がこの場所にあったってんでしょうか?

今の東京駅の改修費用は500億円
単純に当てはめられませんけど、
それを元に換算すると相坂トンネルの事業は今でいうと3.5億円

邦画の平均予算1本ぐらい、大したことないじゃんとお思いがちでしょう。
そりゃ、怪物くんの劇場版だって20億
ガッチャマンにいたっては80億って噂もあるぐらいですから、
屁でもないのかも知れませんが、
当時の香寺町の年間予算が4万円とか聞いちゃったら、
心持も違うんじゃないでしょうか?

年間予算の半分も突っ込んでやらなければいけなかった事業。

現地に行かれた方はご存知だと思いますが、
それほど急斜面でもない迂回路があり、越えた先にある民家も数件
近くには練金峠もあり、どう考えても年間予算の半分を費やす必要はなかったに違いありません。

地元住民以外からは反対の声も強かったというのも無理のない話。
それでも押し通されたのは恐怖と言って過言じゃねえでしょう。

ここの住民は町の予算を半分動かせる権力を持っているのです。
ガクブル、ガクブルですよ。

だから絶対、粗相など出来ません。
夜に突撃される方は、そのあたりを重々ご承知ください。
フロントガラスに手形つけられるより、
怖いお兄ちゃん達に囲まれながら誓約書に血判押す方が、よっぽど確立高そうです。

あれ、思ったより怖くなってきました
いや、現地に行けば、その誤解も解けるハズです。

ホントは怖くないんですよ、この姫路最大の心霊スポットは。

見てください。
この雰囲気美人。

ファンタジー!
たいして見たことありませんが
たいがいのジブリ映画に出てきそうなこの雰囲気。
どこが怖いというのでしょう?

西側からやってきましたが、
コチラの雰囲気は毎回、息を飲まれます。

高さのおかげで、トラックどころか、
ファミリーカーでさえ危ういこの道が、
今の今までこの姿を保っている奇跡にとりあえず感謝。

まあ、予備知識なしに、
いきなり眼前にこんなのが現れたら、
確かに恐怖を覚えるかも知れませんが・・・
所詮は生活道路なのですよ。
しかもれっきとした
県道(80号宍粟香寺線)なのですよ。

車も時々、通ります。

ただあまりに狭すぎるということで現在迂回路が
絶賛建設中。

こんな辺鄙なトコにまだ道を・・・・

地元の力をまざまざと肌で感じて、
肝が冷えますが、もうちょっと怖い話が。

もし、県道指定を外されたら、
取り壊されてしまう
かも知れないって事です。

穴居人としてはそっちの方がガクブルです。
中も普通のトンネル・・・・
にはお世辞にも見えませんが、
まあ、許容範囲でしょう。

全長もたかだか、70m

向こう側が見えてる内は大したことありません。
これでビビッてる御方は、
武田尾の廃トンネルなんぞに手を出すと、
きっと心臓麻痺ものですぞ。
大正の当時は
貴重だったコンクリートで仕上げています!
というのがキャッチフレーズだったみたいですが、
今となっては、逆効果。

総、レンガ作りだったら、
文化遺産入りで、
存続の心配もしないで済んだんでしょうが・・・

しかしその分、補修も容易で存続したとも言えるので
人生何が高じるかわかりません。

ほら明るくなってくると、怖さも半減。

実に大したことありません。
さてあっという間に出口まできました。

標識もこのとおり立派、立派。
雰囲気も抜群です。

トンネルの中はいかがでしたでしょうか?
思ったよりは怖くなかったのでは?

その調子でコチラをご覧ください↓↓
実は東側はこのとおり、
丁寧に防護柵に覆われているのです。

つまりトンネルで、
振り向いたら女の幽霊に次いでぐらい、
夢想するに違いない落石をも
鉄壁ガードしてくれてます。

かなり山裾なので、大きな岩もないと思うんですが、
この徹底っぷり。

ここまで過保護なのは、
なかなかお目にかかれません。

まだまだ怖い?

そういう方には、とっておきをお見せしましょう。
しょうがないなぁ。

向かって右側の斜面を登って、
トンネルの直上を目指します。
ちなみに上からだとこんなカンジ。

相坂トンネルを特集したブログやホームページは
数あれど、ここに行き着いているのは、
やまあそさんぐらいです。

真上に何があるのかというと・・・
こんなものがあったりします。

うわぁ・・・とか思った方!
ちょいとお待ちください。

けっして落盤事故か
何かで亡くなった人のお墓とかじゃありません。

・・・いやたぶん。
何せ落盤事故とかあった日にゃ
入り口横の案内板に嬉々として
「2人死亡!」とか書くはずです。
強制連行が云々、もっと煩いはずです。

ともかく当時ものに違いないレンガの中には、
この地蔵菩薩様が鎮座しておられます。
賢明な皆様ならば、もうおわかりいただいたでしょう。

そう。相坂トンネルは防護柵どころか、
お地蔵さんにも守られているのです。

至れり尽くせりとはこのことですね。

頭上から、ずっと見守ってくれている訳です。

なんて、安心感なんでしょ。

お地蔵さんのに使われているコンクリが
粗雑で今にも崩れてしまいそうとか、
不安材料はまあ、ありますが
ホラーな要素除けには、
申し分ないんじゃないでしょうか?

しかも入り口前に鎮座して、余計な噂を
(目の前の池で死体遺棄があったとか)
たてない謙虚さ。

うん、素敵です。
まだまだ怖さが拭えない?
正攻法じゃ駄目って事ですな。

ならば、さらにとっておき、
逆の話をしましょう。
もっと怖い真実を公開します。

実は相坂トンネル、周りが凄すぎて
恐怖レベルが鼻で笑うレベルなのです。

←たとえばここ。

相坂峠から八葉寺に抜ける道。

ここはだっだ広い姫路市の中でも珍しい
廃村だった過去があるのです。

その名も八徳村

廃村になった原因を、穴居人は知ってますが
今は秘密にしておきます。
杉沢村伝説のごとく、人が息づいていた場所が
失われる不気味さは、
県道の比ではないでしょう。
もうひとつ。

そもそも、相坂トンネルであがる
噂のほとんど、池のほとりで死体遺棄があったとかは
実際に起こった事件なんです。

ただし、別の峠の出来事ですが。

つまりそっちは本物って訳です。

おもちゃの銃で脅されて怖くないのは、
銃の怖さを知っていて、
それが無力化されていることに安心するからです。

呪われし暮坂峠の事を知れば、
相坂など屁のツッパリにもならんのですよ。

さあ、いかがだったでしょうか。
もう相坂トンネルが怖いなんて言わせませんよ。

怖くない点を整理してみましょう。

@年間予算の半分を費やすぐらい、
 村人に求められた生活道路だった。

A全長が短く、
 入り口から出口まで容易に把握できる。

B防護柵で落石への配慮も抜群。

Cお地蔵さんが頭上から見守ってくれている。

D近くに本物の廃村があり、そっちの方が怖い。

E近くに本物の死人続出スポットがあり、
 そっちの方が怖すぎる。


これで怖いヤツは、
芦田愛菜ちゃんの満面の笑顔が
エクソシストでゲロ吐いてた悪霊
ソックリだとかのたまう妄想レベルに違いありません。

さあ、家族でピクニックがてらに、
大正文化遺産見物とかいかがでしょうか?
乗馬クラブもありますしね。

ひとつおまけをば。

お地蔵さんに気をとられがちですが、
実は足元をみると・・・・
こんなところにもレンガ造りの建造物が。
相坂トンネルの資材のあまりモンでしょうか?

実はひとつきな臭い話をするとすれば、
何故、年間予算の半分を使ってトンネルを
建造しなければならなかったのかの、
答えがきっとここにあります。

コンクリで造れるトンネル
わざわざレンガにした理由。

それは地元にあった煉瓦工場だった
のではないでしょうか。

つまり、村の予算を半分費やしてまで、
煉瓦を買い上げたかったのはコンクリに押される
地元産業の救済策だったのです。

そのトンネルを見守るお地蔵さんが
コンクリなのは・・・
ちょいと皮肉めいたものを感じますね。

穴場スコア
「イーグル」クラス


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撮影:2013.06 by 穴居人